【中国物権法 各則(2)用益物権】


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Q1 用益物権とはどのようなものでしょう?

A1 では、まず用益物権の概念についてご説明します。用益物権についてご説明しますね。

用益物権とは、他人の所有する不動産や動産に対して、法に基づき、占有、使用及び収益する権利です。前述の所有権は自己の所有する不動産や動産を、占有、使用、収益及び処分する権利です。

この2つの概念を比べると、以下の違いがあります。まず、権利の対象からみれば、所有権は自己の所有する不動産や動産に対する権利ですが、用益物権は他人の所有する不動産や動産に対する権利です。中国の用益物権とは?
そして、権利の内容からみれば、所有権は占有、使用、収益、処分の権能ですが、用益物権は占有、使用、収益の権能です。つまり、用益物権は、所有権の四つの権能のうち、処分権を除く他の三つを含みます。この2つの権利の衝突を防止するために、物権法は「所有権者は、用益物権者の権利行使に干渉してはならない。」と定めています。



Q2 もっと具体的に用益物権について知りたいです。

A2 自然資源に対する用益物権についてご説明しましょう。

中国では、土地、鉱物資源、水流、海域、森林、山嶺、草原、荒地、砂洲地などの自然資源の私人所有が禁止されていますが、国家所有、若しくは国家所有であるが集団が使用する及び法律に集団所有に属すると規定する自然資源に対して、組織、個人は法に基づき占有、使用及び収益を得ることができます。

例えば、土地請負経営権、宅地使用権、海域の使用権、鉱山探査権、採掘権、取水権及び使用水域、養殖権、漁業権などです。これらの用益物権は法律の保護を受けます。例えば、不動産や動産の徴収、収用により使用する用益物権の消滅又は用益物権の行使に影響があった場合、用益物権の権利者は法律に基づき、相応の補償を得ることができます。
自然資源使用については以下の2つの原則が存在します。もっと具体的に用益物権のことを教えて!
(1)有償使用の原則
自然資源の有償使用制度を実施する。但し、法律に別段の定めがある場合は、この限りではない。
(2)資源の保護と合理的な開発利用の原則
用益物権の権利者が権利を行使するには、資源の保護と合理的な開発利用に関する法律の規定を遵守しなければならない。



Q3 中国では土地の私有は認められていないですよね。
  農地については、どのような権利に基いて使用しているのでしょうか?

A3 そうですね。中国では、土地の私有を認めておらず、土地の社会主義公有制を実施しています。

具体的には、「都市の土地は、国家所有に属する。農村と都市の郊外の土地は、法律で国家所有に属すると規定されているものを除いて集団所有に属し、宅地、自留地、自留山も集団所有に属する。」と定められている。(憲法10条1項)
中国で農業はじめました~
一方、各農民に対してはその土地の使用権を認め、これを「土地請負経営権」と言われます。農村集団経済組織は家庭請負経営を基礎とし、統一と分離が結合する2重の経営体制を実施します。農民の集団所有及び国家の所有の耕地、林地、牧草地及びその他農業に使用する土地を農民が集団で使用する場合、法に基づき土地請負経営制度を実施します。農民に対してはその土地の使用権を認めています。



Q4 土地請負経営権というものがあるんですね。その権利内容について教えてください。

A4 土地請負経営権の権利者は法に基づき、その請負経営の耕地、林地、牧草地などについて占有、使用及び収益の権利を享有し、栽培業、林業、牧畜業などの農業生産に従事する権利を有します。その請負経営の耕地、林地、牧草地などについて占有、使用及び収益の権利を享有します。栽培業、林業、牧畜業などの農業生産に従事する権利を有します。



Q5 土地請負経営権契約の発効と期限について教えてください。

A5 はい。土地の請負経営権は土地の請負経営権契約の発効時から成立します。県クラス以上の地方人民政府は、土地の請負経営権の権利者へ土地の請負経営権証明、山林権証明、牧草地使用権証明を発給し、併せて登録し、土地の請負経営権を確認しなければなりません。耕地の請負期限は30年としています。牧草地の請負期限は35年から50年です。林地の請負期限は30年から70年としています。特殊な材木の林地の請負期限は、国務院林業行政主管部門の審査承認を経て延長することができます。土地の請負経営権は土地の請負経営権契約の発効時から成立します。
請負期限内において注文者である村集団は請負地を調整し、または回収してはなりません。請負地を徴用される場合、土地の請負経営権の権利者は、法律に基づき相応の補償を得ることができます。



Q6 土地請負経営権は移譲できますか?

A6 ええ。土地請負経営権の権利者は、農村土地請負法の規定に基づき、土地請負経営権を下請け、交換、譲渡などの方法を講じ、移譲することができます。移譲期限は請負経営期限の残存期限を超過してはなりません。法に基づき審査承認を経ずに、請負地を非農業の建設に使用してはなりません。
土地の請負経営権の権利者が土地の請負経営権を交換、譲渡し、当事者が登録を要求する場合、県クラス以上の地方人民政府へ土地請負経営の登録変更を申請しなければならず、善意の第三者に対抗してはなりません。土地請負経営権を譲ります。もちろん移譲することはできます。



Q7 建設用地使用権という用益物権について教えてください。

A7 建設用地使用権とは、法律に基づき国家が所有する土地を占有、使用、収益し、当該地の建造物・建築物、構造物及びその付属施設を利用する権利です。建設用地使用権は、土地の地表、地上または地下にそれぞれ設定できます。建設用地使用権とは!



Q8 建設用地使用権の設定方法について教えてください。

A8 建設用地使用権の設定は、払下げや割当てなどの方法を採ることができます。

(1)割当ての方法
割当ての方法で建設用地使用権を設定することに対して厳しく制限されています。割当ての方法を採る場合、法律、行政法規の土地用途に関する規定を遵守しなければなりません。

(2)払下げの方法建設用地使用権の設定は、割当てと払下げの方法があります。
入札、競売、協議などの払下げの方法で建設用地使用権を設定する場合、当事者は書面の形式で、建設用地使用権の払下げ契約書を締結しなければなりません。建設用地使用権の払下げ契約書には、通常、当事者の名称と住所、土地の境界・面積、建築物・構築物及びその付属施設の占有空間、土地の用途、使用期限、払下げ金などの費用及びその支払方法、争議の解決方法などが含まれなければなりません。
工業、商業、旅行業、娯楽及び商品住宅などの事業用地及び同一の土地に2つ以上の意向の用地者がいる場合、入札、競売などの公開競売の方法で払下げしなければなりません。



Q9 建設用地使用権設定の登録について教えてください。

A9 建設用地使用権の設定は、登録機関へ建設用地使用権を登録申請し行われます。建設用地使用権は登録時から設定します。登録機関は建設用地使用権の権利者へ建設用地使用権の証明書を発給しなければなりません。

10と6で!建設用地使用権設定の登録ですか…?



Q10 建設用地使用権者の権利、義務について教えてください。

A10 まず義務からお話しましょう。下記の通りです。建設用地使用権者の義務についてお話しましょう。

(1)土地の合理的利用
建設用地使用権の権利者は、合理的に土地を利用しなければならず、土地の用途を変更してはなりません。土地の用途を変更する必要のある場合は、法に基づき、関連の行政主観部門の審査承認を経なければなりません。

(2)払下げ金の支払
建設用地使用権の権利者は法律の規定及び契約書の約定に照らし、払下げ金などの費用を支払わなければなりません。
建設用地使用権者の権利も教えてにゃ。
次に権利についてお話しましょう。下記の通りです。

(1)建築物、構造物及びその付属施設の所有権
建設用地使用権の権利者が建造した建築物、構造物及びその付属施設の所有権は、建設用地使用権の権利者に属します。但し、相反する証拠・証明のある場合はこの限りではありません。

(2)建設用地使用権の交換、出資、贈与、抵当の権利
建設用地使用権の権利者は建設用地使用権を譲渡、交換、出資、贈与または抵当とする権利を有します。但し、法律に別段の定めがある場合は、この限りではありません。建設用地使用権の譲渡、交換、出資、贈与または抵当とする場合、当事者は、書面の形式で相応の契約書を締結し、登録機関へ登録変更を申請し、当該土地に付随する建築物、構造物及びその付属施設を一括して処分しなければなりません。使用期限は当事者が約定します。但し、建設用地使用権の残存期限を超過してはなりません。

(3)土地収用の場合の補償と払下げ金の返還
建設用地使用権の期限満了までに、公共の利益により事前に当該土地を徴収する必要のある場合は、法律規定に照らし当該土地の地上の家屋及びその他不動産に対して、補償を与えなければならず、併せて相応の払下げ金を返還しなければなりません。



Q11 建設用地使用権者の期限はどのように規定されていますか?

A11 国家が土地利用者に使用権を払い下げる場合には、その最長期間を用途別に定めていて、工業用地は50年、住宅用地は70年、教育、科学技術、文化、衛生、体育用地は50年、商業、観光、娯楽用地は40年、総合的なその他用地は50年と規定されています。但し、住宅建設用地使用権の期限が満了した場合、自動的に継続します。非住宅建設用地使用権の期限満了後の継続期間は、法律の規定に基づき取り扱います。当該地の家屋及びその他不動産の帰属は、約定のある場合は、その約定に従います。約定のない場合、若しくは不明瞭な場合は、法律、行政法規の規定に照らし、取り扱います。ひげを伸ばしてみました。確かに建設用地使用権者の期限は長いですが…



Q12 宅地使用権について説明してください。

A12 まず、宅地使用権の概念からお話します。
宅地使用権とは、法律に基づき集団所有の土地を占有、使用し、当該地の建造住宅及びその付属施設を利用する権利です。中国での宅地使用権とは!
次に、宅地使用権の取得、行使及び譲渡についてお話しますね。
宅地使用権の取得、行使及び譲渡は、土地管理法などの法律と国家の関連規定を適用します。農村の村民は一戸が一個所の宅地しか持つことができず、その宅地の面積は省、自治区、直轄市が定める基準を宅地が自然災害などの原因により滅失した場合、宅地使用権は滅失します。超過することはできません。

農村の村民が住宅を建築する場合には、郷(鎭)の土地利用全体計画に適合し、併せてできる限り元からある宅地と村内の空地を使用しなければなりません。農村の村民の住宅用地は、郷(鎭)の人民政府の審査、決定を経て、県級の人民政府が許可します。

農村の村民が住宅を売りに出し、または貸し出した後、再度宅地を申請しても許可されません。但し、宅地が自然災害などの原因により滅失した場合、宅地使用権は滅失します。宅地を失った村民については、新たに宅地を分配しなければなりません。



Q13 これまで用益物権のうち土地請負経営権、建設用地使用権、宅地使用権について
   説明して頂きました。 今度は地役権について説明してください。

A13 地役権とは、契約の約定に基づき、他人の不動産を利用し、自身の不動産の利益を高める権利です。ここの他人の不動産を承役地とし、自身の不動産を要役地とします。

地役権の設定は、当事者が書面の形式で地役権契約を締結しなければなりません。地役権契約は通常、当事者の氏名または名称及び住所、承役地と要役地の住所、利用の目的と方法、利用期限、費用及びその支払い方法、争議の解決方法の条項を含みます。今度は地役権について教えて!地役権とは、契約の約定に基づき、他人の不動産を利用し、自身の不動産の利益を高める権利のことです。
土地に既に土地請負経営権、建設用地使用権、宅地使用権などの権利が設定されている場合、用益物権の権利者の同意を経ずに、土地所有権の権利者は地役権を設定することはできません。
地役権は地役権契約の発効した時に設定します。当事者が登録を要求する場合、登録機関へ地役権の登録を申請することができます。登録を経ていない場合、善意の第三者に対抗してはなりません。



Q14 承役地者、地役権者の義務について教えてください。

A14 承役地の権利者は契約の約定に基づき、地役権の権利者がその土地を利用することを許可し、地役権の権利者が権利を行使することを妨害してはなりません。承役地者の義務!…と地役権者にも義務があります。
地役権の権利者は、契約書に約定した利用目的と方法に基づき、承役地を利用しなければならず、承役地の権利者の物権の制約を可能な限り減らさなければなりません。



Q15 地役権の期限について教えてください。

A15 地役権の期限は当事者が約定します。但し、土地請負経営権、建設用地使用権などの用益物権の残存期限を超過してはなりません。土地所有権の権利者が、地役権を享有する若しくは地役権を負担する場合、土地請負経営権、宅地使用権を設定する時に、当該地の請負経営権の権利者、宅地使用権の権利者は、既に設定済みの地役権を引き続き享有、若しくは負担します。 地役権の期限は当事者が約定します。



Q16 地役権の譲渡について教えてください。

A16 地役権を単独で譲渡してはなりません。土地請負経営権、建設用地使用権などを譲渡する場合、地役権も併せて譲渡します。但し、契約書に別段の定めがある場合は、この限りではありません。要役地及び要役地上の土地請負経営権、建設用地使用権を部分的に譲渡する際、譲渡部分が地役権に関わる場合、譲受人は同時に地役権も享有します。承役地及び承役地上にある土地請負経営権、建設用地使用権を部分的に譲渡する際、譲渡部分が地役権に関わる場合、地役権は譲受人に対して拘束力をもっています。地役権を単独で譲渡してはなりませんよ。



Q17 地役権は抵当にできますか?

A17 地役権は単独で抵当としてはなりません。土地請負経営権、建設用地使用権などを抵当とする場合、抵当権が実現するとき、地役権も併せて譲渡します。地役権は単独で抵当としてはなりませんよ!



Q18 地役権の滅失について教えてください。

A18 地役権の権利者が法律の規定若しくは契約書の約定に違反し、地役権を乱用した場合、または承役地を有償で利用し、約定した支払期限の満了後の合理的な期限内に2度の催告を受けても費用を支払わない場合、承役地の権利者は地役権の契約を解除する権利を有し、地役権は滅失します。地役権の契約を解除されますよ。ちょっとくらい契約書に違反してもいいよね…



Q19 その他の用益物権について説明してください。

A19 上述した建設用地使用権、農村土地請負経営権、宅地使用権、地役権という四つの主な用益物権の他にも、物権法における「用益物権」には、海域の使用権、鉱山探査権・採掘権、取水権及び水域、砂洲地を利用して養殖業、漁業に従事する権利などがあります。

これらの用益物権については、それぞれの個別法と「物権法」における用益物権に関する一般的規定を適用します。 4つの用益物権の他にはにゃいの?物権法上における「用益物権」は他にもありますよ。