【中国権利侵害責任法 総論(2)】


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Q1 権利侵害責任の負い方にはどのような方式がありますか?

A1 権利侵害責任の負担方式について、権利侵害責任法は、次のような8種類の負担方式を定めています。

① 侵害の停止
② 妨害の排除
③ 危険の除去
④ 財産の返還
⑤ 原状の回復
⑥ 損害の賠償
⑦ 謝罪
⑧ 影響の除去、名誉の回復 早く逃げなきゃ!権利侵害したんですか?!
以上の権利侵害責任の負担方式については、単独での適用および併用での適用のいずれも可能です。



Q2 損害賠償責任の算定について教えてください。

A2 損害の賠償という権利侵害責任の負担方式について、権利侵害責任法は、人身侵害と財産侵害との二つの種類にわけて、損害賠償責任の算定方法を定めます。
そして、一般的な損害賠償のほか、特定の権利侵害行為に対して、精神的損害賠償(慰謝料)および懲罰的損害賠償が定められています。 損害賠償の算定をしましょ。2828ですか・・・?



Q3 身体的損害の損害賠償について教えてください。

A3 他人を侵害し人身の損害をもたらした場合、医療費、看護費、交通費等の治療および回復のための支出する合理的な費用および損害によって逸失した収入を賠償しなければなりません。被侵害者が死亡した場合、葬儀費用および死亡賠償金を支払わなければなりません。同一の権利侵害行為により複数人が死亡した場合、同一の金額をもって死亡賠償金を確定することができます。 治療及び回復のための費用と損害を賠償してもらうにゃ!
権利被侵害者が死亡した場合、その近親者は権利侵害者に対して権利侵害責任を負うことを請求する権利を有します。権利被侵害者が組織、または当該組織が分立、合併を行った組織の場合、権利を相続する組織は侵害者に対して権利侵害責任を負うことを請求する権利を有します。権利被侵害者が死亡した場合、権利被侵害者の医療費、葬儀費用等の合理的な費用を支払う者は、権利侵害者に対して費用の賠償を請求する権利を有します。ただし、権利侵害者がすでに当該費用を支払っている場合はこの限りではありません。



Q4 財産侵害の場合の賠償について教えてください。

A4
① 財産侵害賠償の一般的計算方法――財産損失額(市場価格)
他人の財産を侵害した場合、財産損失額は損失が発生した時点での市場価格またはその他の方式に基づいて計算します。つまり、権利侵害責任法は、損害発生時点での市場価格を財産侵害賠償の一般的基準とします。これは、「同額賠償」といわれます。 賠償金を払ったらなくなっちゃった…一体いくら払ったんですか(・・;)
② 人身的利益の賠償
他人の人身に関する権利・利益を侵害し、財産上の損失を与えた場合、権利被侵害者が当該の侵害によって受けた損失に基づいて賠償を請求することができます。権利被侵害者の損失を確定することが難しく、権利侵害者が当該の侵害によって利益を獲得している場合、その獲得した利益に基づいて賠償を行います。権利侵害者が当該の侵害によって獲得した利益の確定が難しく、権利被侵害者と権利侵害者が賠償金額について合意に達せず、人民法院に訴訟を提起した場合、人民法院が実際の状況に基づいて賠償金額を確定します。



Q5 他人の人身、財産の安全に危害を及ぼした場合について教えてください。

A5 権利侵害行為が他人の人身、財産の安全に危害を及ぼした場合、権利被侵害者は侵害者に対して侵害の停止、妨害の排除、危険の除去等の権利侵害責任を負うことを請求することができます。
ごめんにゃ・・・権利侵害責任を負うことを請求しますからね!!



Q6 精神的損害の場合について教えてください。

A6 精神的損害賠償(慰謝料)について、従来は、最高人民法院の司法解釈にはそれに関する規定がありますが、権利侵害責任法は初めて法律レベルでは精神的損害賠償(慰謝料)を明文で定めます。権利侵害責任法は「他人の人身的権利・利益を侵害し、他人に精神上の重大な損害をもたらした場合、権利被侵害者は精神的損害賠償(慰謝料)を請求することができる。」と規定しています。

つまり、精神的損害賠償は、「他人に精神上の重大な損害をもたらした場合」に限定しています。そして、「他人の人身的権利・利益を侵害」するという規定からみれば、現段階の精神的損害賠償は自然人の人身的権利・利益の損害に限り、会社などの組織の精神的損害賠償は未だ認められません。 精神損害賠償は、「他人に精神上の重大な損害をもたらした場合」に限定しています。



Q7 他人の侵害の防止のために自分が侵害を受けた場合について教えてください。

A7 はい。「受益者責任」についてお話しましょう。

受益者責任についてお話します。他人の民事権益が侵害されるのを防止、制止することにより自ら損害を受けた場合は、権利侵害者が責任を負います。権利侵害者が逃亡するか、あるいは責任を負う能力を持たず、権利被侵害者が補償を請求した場合、受益者は適切な補償を与えなければなりません。これは、「受益者責任」といわれます。




Q8 被害者と行為者とも過失がない場合についてはどうですか?

A8 「公平責任」というのがあります。「公平責任」とは、被害者および行為者の双方は誰にも過失なく損害を生じた場合、双方で損失を分担する責任です。権利侵害責任法は、「公平責任」を導入し、「損害の発生について被害者と行為者のいずれにも過失がない場合、実際の状況に基づいて、双方が損失を分担する。」と定めています。 両方とも過失がないときはどうなの?「公平責任」といって双方で損失を分担します。



Q9 損害賠償費用の支払い方式について教えてください。

A9 損害の発生後、当事者は賠償費用の支払い方式について協議することができます。
協議にて合意に達しなかった場合、賠償費用は一括による支払いとしなければなりません。一括による支払いが確実に困難である場合は、分割による支払いでもよいが、相応の担保を提供しなければなりません。損害賠償費用は一括による支払いですよ。



Q10 権利侵害者が、その責任を免除・軽減される場合について教えてください。

A10 これまで述べてきたように、権利侵害責任は「過失責任」の原則を基本的な帰責の原則とします。この場合、権利侵害責任は、過失がある当事者が負います。これに基づき、権利侵害責任法は、下記のよう権利侵害責任の免除・軽減される場合です。に権利侵害責任の免除・軽減の事情を定めています。

1 権利被侵害者の過失がある場合
損害の発生について権利被侵害者にも過失があった場合、権利侵害者の責任を軽減することができます。

2 被害者の故意の場合
損害が被害者の故意によってもたらされた場合、行為者は責任を負わなくてもいいです。

3 第三者の原因の場合
損害が第三者によってもたらされた場合、第三者は権利侵害責任を負わなければなりません。

4 不可抗力の場合
不可抗力によって他人に損害を与えた場合、責任を負わなくてもいいです。ただし、法律法規で別途規定がある場合はその規定に従います。ここの「不可抗力」は「発生が予見不可能で、結果を回避できず、かつ克服できない客観的状況」を指します。

5 正当防衛の場合
正当防衛によって損害を与えた場合、責任を負わなくてもいいです。正当防衛が必要な限度を超え、あるまじき損害をもたらした場合、正当防衛者は相応の責任を負わなければなりません。

6 緊急避難の場合
緊急避難によって損害を与えた場合、危険な状況を発生させた者が責任を負います。危険が自然要因によって引き起こされた場合は、緊急避難者は責任を負わなくてよいかまたは適切な補償を行えばよいです。緊急避難措置の採用が不適切であったかまたは必要な限度を超え、あるまじき損害をもたらした場合、緊急避難者は相応の責任を負わなければなりません。



Q11 権利侵害者によって、その責任が変わってくる特殊な類型はありますか?

A11 権利侵害責任法第四章はいくつの特殊の責任主体に応じて、その権利侵害責任を定めています。特殊の責任の主体は、責任無能力者・限定的責任能力者、使用者、注文者、安全保障責任者などを含みます。
特殊にゃ!責任無能力者・限定責任能力者、使用者、注文者、安全保障責任者などを含みます。



Q12 責任無能力者・制限責任能力者の権利侵害責任について教えてください。

A12 責任無能力者または制限責任能力者の権利侵害責任は、その後見人に帰属します。すなわち、責任無能力者または制限責任能力者が他人に損害を与えた場合、その後見人が権利侵害責任を負います。
ただし、後見人が後見責任を十分に果たしている場合はその権利侵害責任を軽減することができます。財産を有する責任無能力者、制限責任能力者が他人に損害を与えた場合、本人の財産の中から賠償費用を支払います。不足分については、後見人が賠償を行います。 責任無能力者または制限責任能力者の権利侵害責任は、その後見人に帰属します。
民事行為能力を完全に有する者は自らの行為に対して一時的に意識がない、または自己制御が失われた状態で他人に損害を与え、かつ過失があった場合、権利侵害責任を負わなければなりません。過失が無い場合は、行為者の経済的状況に基づいて被害者に対して適切な補償を行います。民事行為能力を完全に有する者は飲酒、麻酔薬または向精神薬の濫用により、自らの行為に対して一時的に意識を失い、または自己制御を失った状態で他人に損害を引き起こした場合、権利侵害責任を負わなければなりません。 じゃあ責任とってもらお♪



Q13 使用者の権利侵害責任について教えてください。

A13 権利侵害責任法では、雇用、派遣や労務請負の労働関係における使用者責任を定めています。この使用者責任の創設は、英米法の影響を与えられたうえで、使用者の選任および監督の過失にかかわらず、使用者(雇い主)の責任を採用しました。この点は、大陸法系における使用者の責任、例えば、日本民法715条の使用者の選任および監督の過失にかかわらず、使用者の責任を採用しました。規定と異なっています。


(1)雇用場合の使用者責任
雇用組織の従業員が事業任務の執行によって他人に損害を与えた場合、雇用組織が権利侵害責任を負います。

(2)労務派遣の場合の使用者責任
労務派遣期間において、被派遣者の従業員が事業任務の執行によって他人に損害を与えた場合、労務派遣を受け入れた雇用組織が権利侵害責任を負います。労務派遣組織に過失がある場合は、相応の補充責任を負います。

(3)労務請負の場合の使用者責任 社長も大変だにゃ!
個人間で労務関係を形成し、労務を提供する側が労務により他人に損害を与えた場合、労務を受け入れた側が権利侵害責任を負います。労務を提供する側が労務によって自ら損害を受けた場合、双方が各自の過失に基づいて相応の責任を負います。



Q14 安全保障者の責任について教えてください。

A14 これまで述べた責任無能力者・制限責任能力者の責任、使用者の責任のほかに、権利侵害責任法には安全保障者の責任を規定しています。安全保障者の責任はインターネットの権利侵害責任、ホテルや商店など公共の場所における安全配慮義務を尽くされない権利侵害責任、幼稚園および学校における権利侵害責任の三つの権利侵害責任を含みます。 制限責任能力者、使用者責任のほかに安全保障者の責任もあります。



Q15 インターネットに関する権利侵害責任について教えてください。

A15 近年最も注目されているインターネットと関わる名誉毀損、プライバシー侵害の社会問題に応じて、権利侵害責任法は、インターネットユーザー、インターネットサービスの提供者の権利侵害責任を定めています。

具体的には、インターネットユーザー、インターネットサービスの提供者はインターネットを利用して他人の民事権益を侵害した場合、権利侵害責任を負わなければなりません。インターネットユーザーがインターネットサービスを利用して権利侵害行為を実施した場合、権利被侵害者はインターネットサービス提供者に対してリンクの削除、遮断、断絶等の必要措置を行うよう通知する権利を有します。 インターネット上でも権利侵害するつもりですか?!
インターネットに関する権利侵害は、共同行為の場合、各権利侵害者の連帯責任を追及することができます。この場合の連帯責任は以下の二つの種類を含みます。

第一に、インターネットサービスの提供者は通知を受け取った後、速やかに必要措置を行わなかった場合、損害の拡大部分についてインターネットユーザーと連帯責任を負います。
第二には、インターネットサービスの提供者はネットユーザーが当該インターネットサービスを利用して他人の民事権益を侵害していることを知りながら必要措置を行わなかった場合、当該インターネットユーザーと連帯責任を負います。



Q16 ホテルや商店など公共の場所における安全保障者の権利侵害責任について
   教えてください。

A16 権利侵害責任法は、ドイツの「取引の安全配慮義務」理論を参照したうえで、公共場所で起きた損害について賠償責任を負うと定めています。具体的には、ホテル、ショッピングセンター、銀行、バス停、娯楽場等の公共の場所の管理人または集団活動の組織者は安全保障義務を十分に果たしていないために他人に損害を与えた場合、権利侵害責任を負わなければなりません。

ただし、第三者の行為により他人に損害がもたらされた場合、第三者が権利侵害責任を負います。管理人または組織者は安全保障義務を果たしていなかった場合、相応の補充責任を負います。 権利侵害責任法では、ホテルやショッピングセンターなど、公共場所で起きた損害について賠償責任を負うと定めています。



Q17 幼稚園および学校における権利侵害責任について教えてください。

A17 幼稚園および学校に教育および寄宿において起きた身体的損害について、被害者の責任能力の有無により侵権責任が異なっています。 幼稚園や学校の権利侵害責任はどうなってるの?被害者の責任能力の有無により、責任が異なってきます。
① 責任無能力者の身体的損害の責任
責任無能力者が幼稚園、学校またはその他の教育機関において教育および寄宿している間に人身の損害を受けた場合、幼稚園、学校またはその他の教育機関が責任を負わなければなりません。ただし、教育、管理の職責を十分に果たしていたことが証明できる場合は、責任を負わなくてもいいです。

② 制限責任能力者の身体的損害の責任
制限責任能力者が学校またはその他の教育機関において教育および寄宿している間に人身の損害を受けた際、学校またはその他の教育機関は管理の職責を十分に果たしていなかった場合、相応の補充責任を負わなければなりません。

③ 第三者による身体的損害の責任
責任無能力者または制限責任能力者が幼稚園、学校またはその他の教育機関において教育および寄宿している間に、幼稚園、学校またはその他の教育機関以外の第三者から人身の損害を受けた場合は、権利侵害者が権利侵害責任を負います。幼稚園、学校またはその他の教育機関は管理の職責を十分に果たしていなかった場合、相応の補充責任を負います。