中国における対外投資の規制緩和について


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Q1 前講のトピックとも関係しますが、近年、中国企業の対外投資が急拡大していますね。
  本国の企業の対外投資を促進するために、中国ではどのような法令を制定してきましたか?

A1 わかりました。どのような法令、通知が出されてきたか、ざっとご説明しますね。また後程詳しくご説明しますが。まず、「海外投資プロジェクト認可暫定管理弁法」(国家発展改革委員会2004年)、「海外投資による企業設立の審査認可事項に関する規定」(商務部2004年)など対外投資に関する法令が多数制定されてきました。これらの法令により、発展改革委員会による対外投資の審査・認可、商務部による対外投資の審査・認可および国家外貨管理局による外貨管理などの対外投資に関する管理制度が定められています。前講のトピックとも関係しますが、近年、中国企業の対外投資が急拡大していますね。本国の企業の対外投資を促進するために、中国ではどのような法令を制定してきましたか?
そして、近年、「海外投資管理弁法」(商務部2009年)、「国内企業による対外直接投資に関する外貨管理規定」(国家外貨管理局2009年)、「国外投資プロジェクト管理の改善に関連する問題についての通知」(国家発展改革委員会2009年)、「国外投資プロジェクトにかかわる認可権限の委譲業務に関する通知」(国家発展改革委員会2011年)、などの新しい法令が制定・実施されています。




Q2 対外投資の事前的な審査・認可権限の移管、認可手続の簡略化、認可基準の緩和などを通じて、対外投資に関する規制は緩和されてきていると考えてよいですか?

A2 その通りです。しかし、中国企業の対外投資を促進するために、中国企業の海外進出の条件、審査認可の権限・手続・基準および外貨の使用などを一層緩和することが求められています。今後、中国では、対外投資管理体制を改革し、現段階の事前的審査認可制度から事後的登録制を中心とする管理方式へ転換すべきです。対外投資の事前的な審査・認可権限の移管、認可手続の簡略化、認可基準の緩和などを通じて、対外投資に関する規制は緩和されてきていると考えてよいですか?





Q3 前講で「走出去」について学びました。
  2002年、中国は「走出去(海外進出)」という国家戦略を打ち出し、中国企業の対外投資を積極的に推進しています。この対外投資の中身について整理して頂けますか?

A3 「対外投資」とは、中国で法律により設立している企業が、新設、買収合併などの方法を通じて、海外で非金融企業を設立し、または既存の非金融企業の所有権、支配権、経営管理権等の権益を取得する行為(海外投資管理弁法2条)、または投資主体が通貨、有価証券、現物、知的財産権または技術、持分、債権等の資産および権益の投資または担保の提供を通じて、国外において所有権、経営管理権およびその他の関係権益を取得する活動を指します(国外投資プロジェク卜審査認可暫定管理規則3条)。前講で「走出去」について学びました。

そのうち、「対外直接投資」とは、国内企業が対外直接投資の主管部門の批准を経て、設立(独資、合資、合作)、合併・買収、資本参入等の方式で、国外で企業を設立するまたは既存企業或いはプロジェクトの所有権、支配権或いは経営管理権等の権益を取得する行為を指します(国内企業による国外貸付に関する外貨管理に関連する問題の通知2条)。





Q4 近年、中国企業の対外投資が急拡大していますね。よくニュースでも見ます。
  世界的に見てどれくらいの規模なのでしょうか?

A4 例えば、2013年9月9日に、商務部、国家統計局および国家外貨管理局は共同で「2012年度中国対外直接投資統計公報」を発表しています。この公報によると、2012年度の中国対外直接投資額は、世界の外国直接投資が前年比17%低下した中で、前年比17.6%増加の878億米ドルと史上最高水準となり、米国と日本に次いで、初めて世界三大対外投資国の一つになっています。2012年末までに、中国は世界の179の国や地域で、2万2000社の直接投資企業を設立しています。中国の対外直接累計額は5319.4億米ドルに達し、世界13位になっています。(※1)2013年1月~7月、中国は世界の156の国や地域で、3275社の海外企業に506億米ドルを直接に投資しました。前年比20%の成長です。 (※2)過去十数年、中国企業による対外投資額は急成長を保ち、2003年から2012年までの年間平均成長率が41.6%に達しています。
近年、中国企業の対外投資が急拡大していますね。よくニュースでも見ます。世界的に見てどれくらいの規模なのでしょうか?
今後の発展について、全国人民代表大会財政経済委員会の辜勝阻副主任は2014年1月11日に北京で開かれた「2014年中国海外投資新年フォーラム」で、中国の対外投資は今後も高速で成長し、2020年に対外投資額が1兆米ドルを超えると予測としています。(※3)




※1 商務部、国家統計局、国家外貨管理局編:『2012年度中国対外直接投資統計公報』、中国統計出版社2013年、3頁以下。
※2 廖笛杉:「商務部報告詳解中企海外投資現状」、『21世紀経済報道』2013年9月11日参照。
※3 http://finance.takungpao.com/financial/q/2014/0112/2171801.html




Q5 先ほど中国企業の対外投資を促進するための法令の制定について概説いただきました。
  より詳細にご説明して頂けますか?

A5  わかりました。「海外投資に関する外貨管理弁法」(国家発展改革委員会1989年)、「海外投資プロジェクトに関する管理強化の意見」(国家計画委員会1991年)、「海外投資の財務管理に関する暫定弁法」(財務部1996年)、「海外投資プロジェクト認可暫定管理弁法」(国家発展改革委員会2004年)、「海外投資による企業設立の審査認可事項に関する規定」(商務部2004年)など対外投資に関する法令が多数制定されてきています。これらの法令により、発展改革委員会による対外投資の審査・認可、商務部による対外投資の審査・認可および国家外貨管理局による外貨管理などの対外投資に関する管理制度が定められています。

そして、近年、「海外投資管理弁法」(商務部2009年)、「国内企業による国外貸付に関する外貨管理に関連する問題の通知」(国家外貨管理局2009年)、「国内企業による対外直接投資に関する外貨管理規定」(国家外貨管理局2009年)、「国外投資プロジェクト管理の改善に関連する問題についての通知」(国家発展改革委員会2009年)、「国外投資プロジェクトにかかわる認可権限の委譲業務に関する通知」(国家発展改革委員会2011年)、「対外投資合作分野における競争行為の規範化に関する規定」(商務部2013年)などの新しい法令が制定・実施され、対外投資に関する規制は緩和されています。例えば、これらの法令の制定により、対外投資の事前的な審査・認可について、認可権限の移管、認可手続の簡略化、認可基準の緩和などの面で緩和されています。先ほど中国企業の対外投資を促進するための法令の制定について概説いただきました。より詳細にご説明して頂けますか?

本講では、発展改革委員会による対外投資の審査・認可、商務部による対外投資の審査・認可、国家外貨管理局による外貨管理などの対外投資に関する管理制度を概観し、特にその規制緩和についてそれぞれ分析したうえで、中国における対外投資の管理制度について今後の展望を行うこととします。








Q6 対外投資の審査・認可の緩和は、どのように変遷してきていますか?

A6 2004年10月9日、国家発展改革委員会は「国外投資プロジェク卜審査認可暫定管理規則」(以下、「本規則」という)を制定し、対外投資に関する事前的な審査・認可制度を設立しました。そして、2011年2月14日、国家発展改革委員会は「国外投資プロジェクトに係る認可権限の委譲業務についての通知」(以下、「本通知」という)を公布し、一部の対外投資プロジェクトの認可権限を国家発展改革委員会から省級発展改革部門に移管し、その手続を簡略化しています。対外投資の審査・認可の緩和は、どのように変遷してきていますか?



Q7 まず審査・認可権限の移管について教えていただけますか?

A7 中国では、国家発展改革委員会および省級発展改革部門を主管機関として、対外投資の資源開発類プロジェク卜および特殊プロジェク卜について審査確認管理を実施しています。具体的な管理権限は下記のとおりです。まずは、資源開発類プロジェク卜の審査・認可権限についてご説明します。

資源開発類プロジェク卜とは、国外の原油まず審査・認可権限の移管について教えていただけますか? 、鉱山等の資源探査開発投資プロジェクトを指します。2004年の「国外投資プロジェク卜審査認可暫定管理規則」は、資源開発類プロジェク卜の審査・認可権限について、下記のように定めました。中国側の投資額が3000万米ドルおよびそれ以上の資源開発類プロジェク卜については、国家発展改革委員会が審査確認を行い、そのうち中国側の投資額が2億米ドルおよびそれ以上のものについては、国家発展改革委員会が審査した後、国務院に審査確認を求めます(本規則4条2項)。そして、中国側の投資額が3000万米ドル未満の資源開発類および中国側の外貨使用投資額が 1000万米ドル未満のその他のプロジェク卜については、各省、自治区、直轄市および計画単列市並びに新疆生産建設兵団等の省級発展改革部門が審査確認を行います(本規則5条1項)。

上述の審査・認可権限について、2011年の「国外投資プロジェクトに係る認可権限の委譲業務についての通知」により、一部の権限を国家発展改革委員会から省級発展改革部門へ移転することになっています。具体的には、資源開発類の国外投資プロジェクト(特殊プロジェクトは除く)は、所在する省・自治区・直轄市および計画単列市・新疆生産建設兵団等の省級発展改革部門(以下、「省級発展改革部門」という)が認可を行います。中央管理企業が上述の国外投資プロジェクトを実施する場合、企業は自主的に方針を決定し、かつ国家発展改革委員会に届出を行います。中国側投資額が3億米ドル以上の資源開発類、中国側投資額が1億米ドル以上の非資源類開発類の国外投資プロジェクトは、国家発展改革委員会が認可を行います。(本通知1条)



Q8 特殊プロジェク卜の審査・認可権限について教えていただけますか?

A8 特殊プロジェクトとは、中国と外交関係を確立していない国、国際的な制裁を受けている国、もしくは戦争・動乱等が発生している国および地域での投資プロジェクト、ならびに基礎電信運営、国境を跨いだ水資源開発利用、大規模な土地開発、基幹電力網、新聞メディア等の特殊かつ敏感な業種に係る国外投資プロジェクトです。
特殊プロジェク卜の審査・認可権限について教えていただけますか?
このプロジェクトは、限度額に関わらず、省級発展改革部門もしくは中央管理企業が初回審査を行った後に国家発展改革委員会が認可を行うか、もしくは国家発展改革委員会が初回審査を行った上で国務院に認可を要請することになっています。(本通知2条)




Q9 政府の企業のすみ分けについてはどうなっているのでしょうか?

A9 本通知は、「政府と企業の分離原則」を強調し、「対外投資プロジェクトの市場将来性、経済効果、資源の出所および製品技術プラン等は企業が自主的に方針を決定し、自ら責任およびリスクを担う」と定めていいます。(本通知3条)政府の企業のすみ分けについてはどうなっているのでしょうか?



Q10 審査・認可手続の簡略化について具体的に教えてください。

A10 わかりました。ご説明しますね。

(1)プロジェク卜申請報告の提出
審査確認権限により国家発展改革委員会または国務院の審査確認を行うプロジェク卜は、投資主体が登録所在地の科級発展改革部門にプロジェクト申請報告を提出し、省級発展改革部門が審査した後、国家発展改革委員会に提出する。計画単列企業集団と中央管理企業は、直接国家発展改革委員会にプロジェクト申請報告を提出することができます。(本規則8条)

(2)関係部門の意見の聴取
国家発展改革委員会は、香港特別行政区、マカオ特別行政区、台湾地域への投資プロジェクトおよび中国と外交関係を確立していない国、注意が必要な地域への投資プロジェクトを審査確認する前に、関係部門の意見を聴取しなければなりません。関係部門は、上記資料を受領した日から7業務日以内に、国家発展改革委員会に書面で意見を提出します。(本規則9条)審査・認可手続の簡略化について具体的に教えてください。
(3)評価論証の委託
国家発展改革委員会は、プロジェクト申請報汽を受押した日から5業務日以内に、評価論証を必要とする重要問題について、資格を有するコンサルティング機構に評価論証を委託します。委託を受けたコンサルティング機構は、規定の期間内に国家発展 改革委員会に評価報告を提出しなければなりません。(本規則10条)

(4)報告・登録
国外投資プロジェクトを選別し、協力業務を遂行するため、中国側投資額が3千万米ドル以上3億米ドル以下の資源開発類、中国側投資額が1千米ドル以上1億米ドル以下の非資源類開発類の国外投資プロジェクトに対して、省級発展改革部門は認可文書を発行する前に、国家発展改革委員会に報告・登録しなければならず、国家発展改革委員会は認可文書を受領してから5営業日以内に『地方重大国外投資プロジェクト認可登録書』を発行しなければなりません。登録を経たプロジェクト認可文書は、関連手続の取扱および関連政策の享受に係る依拠となります。(本通知4条)

(5)審査・認可
国家発展改革委員会は、プロジェクト申請報告を受理した日から20業務日以内に、プロジェク卜申請報告に対する審査確認を完了し、または国務院に審査意見を提出します。20業務日以内に審査確認決定を出せないまたは審査意見を提出できない場合は、国家発展改革委員会の責任者は10業務日の延長を許可し、かつ期間延長の理由をプロジェクト申請者に通知します。上述の審査確認機関には、コンサルティング機構に委託して行わせる評価期間が含まれません。(本規則11条)

(6)審査認可書の発行および理由の説明など
国家発展改革委員会は、審査確認を行ったプロジェク卜についてプロジヱクト申請者に書面の審査確認書を発行します。審査の結果確認を与えないプロジェクトについては、書面決定をもってプロジェクト申請者に通知し、理由を説明するとともに、プロジェク卜申請者が法にしたがい行政不服審査を申立て、または行政訴訟を提起する権利を有することを告知しなければなりません。(本規則12条)

(7)審査確認の変更申請
審査確認を経たプロジェク卜に以下のいずれかの状況が生じた場合は、国家発展改革委員会に変更を申請しなければなりません。①建設規模、主要建設内容と主要製品に変更が生じた場合、②建設地点に変更が生じた場合、③投資者または持分に変更が生じた場合、④中国側の投資額が審査確認を経た元の中国側投資額の20%およびそれ以上を超えた場合。



Q11 審査・認可基準はどう緩和されているのでしょうか?

A11 国家発展改革委員会および省級発展改革部門が国外投資プロジェクトを認可する場合、下記の基準に基づき、審査を行わなければなりません。(本規則18条)

① 国の法律、法規および産業政策に合致し、国家主権、安全および公共の利益を損なわず、国際法準則に違反しないこと。
② 経済と社会の持続的発展の要求に合致し、国民経済発展に必要な戦略的資源の開発に有益であること。国の産業構造調整の要求に合致し、国内の比較的に優位性を有する技術、製品、設備の輪出および労務の輸出を促進し、国外の先進技術を導入すること。
③ 国の資本頃目管理および外債管理の規足に合致していること。
④ 投資主体が投資実力を備えていること。審査・認可基準はどう緩和されているのでしょうか?



Q12 商務部による対外投資の審査・認可の緩和について教えてください。

A12 海外投資の促進と規範化を図るために、「確たる留保の必要な行政審査・認可項目に対し行政認可を設定する国務院決定」に基づき、中国商務部は2004年10月1日、「海外投資による企業設立の審査認可事項に関する規定」を公布しました。そして、2009年3月16日、中国商務部は、「海外(境外)投資管理弁法」(以下、「本弁法」という)を制定し、中国の対外投資促進に関する法体系構築の段階的成果として、中国の国内企業による対外投資の際の必要な審査・認可の権限や手続などを明らかにしています。商務部による対外投資の審査・認可の緩和について教えてください。
本弁法は、2009年5月1日より施行されました。2004年の「海外投資による企業設立の審査認可事項に関する規定」を同時に廃止することになります。(本弁法41条)本弁法は、2004年の「規定」と比べると、審査認可の権限や審査認可の手続などの面で緩和されています。例えば、一部の対外投資の審査認可権限を商務部から省級商務部門に移管し、その手続を簡略化しています。



Q13 審査・認可権の移管についてはどうなっていますか?
  商務部と省級商務部の責任分担について教えていただきたいのですが。

A13 商務部は対外投資に対する管理および監督の実施に責任を負い、省級商務主管部門は、その行政区域内の対外投資に対する管理および監督の実施に責任を持っています。具体的に述べます。

(1)商務部の審査・認可権
企業が以下の事由に該当する対外投資を行うには、商務部に申請資料を提出し、その審査・認可を受けます。①中国と外交関係を確立していない国における対外投資、②特定の国または地区における対外投資、③中国側の投資額が1億米ドルおよびこれ以上の対外投資、④複数の国家(地区)の利益に関わる対外投資、⑤国外特殊目的会社の設立(本弁法6条)。審査・認可権の移管についてはどうなっていますか?

(2)省級商務主管部門の審査・認可権
地方の企業が以下の事由に該当する対外投資を行うには、省級商務主管部門に申請資料を提出し、その審査・認可を受ける。①中国側の投資額が1000万米ドルおよびこれ以上、1億米ドル以下の対外投資、②エネルギー、鉱物類の対外投資、③国内における投資勧誘の必要のある対外投資(本弁法7条)。
これらの規定からみれば、商務部は、今後投資額が1億米ドルを上回る対外投資、特定国家に対する対外投資等を含む少数の重大、敏感な対外投資については審査・認可権を維持するものの、他の対外投資に関しては、審査・認可権を省レベルの商務主管部門に移譲する。これにより、一部審査・認可権の移譲もなされています。



Q14 審査認可手続自体、簡略化されていますか?

A14 はい。まず申請の提出について述べます。
企業が本弁法6条、7条に規定する事由に該当する対外投資を行うには、以下の資料を提出しなければなりません。①申請書、②企業の営業認可書の写し、③国外企業の定款および関連合意または契約、④国家関連部門の審査・認可または届出文書、⑤国外買収事項前期報告表(買収類の対外投資の場合)、⑥主管部門が要求するその他の文書(本弁法12条)。
6条、7条に定める場合以外の対外投資について、企業は、「対外投資申請表」の提出のみで申請できるようになります(本弁法8条)。

次に、在外公館への意見募集についてご説明します。
商務部が6条に定める国外投資を審査確認するときは、我が国の在外大使(領事)館(経済商務処・室)に意見を徴求しなければなりません。中央企業に係るものは、商務部が意見を徴求し、地方企業に係るものは、省級商務主管部門が意見を徴求します。
省級商務主管部門が第7条第2項に定める国外投資を審查確認するときは、在外大使(領事)館(経済商務処・室)に意見を徴求しなければならず、その他の状況の国外投資の審査確認については、省級商務主管部門は、状況に応じて在外大使(領事)館(経済商務処・室)に意見を徴求することができます。(本弁法10条)
審査認可手続自体、簡略化されていますか?
審査・認可についてご説明します。
① 商務部の審査・認可
企業が6条に定める国外投資を行うときは、中央企業は商務部に申請を提出し、地方企業は所在地の省級商務主管部門を通して商務部に申請を提出します。申請を受領した後、省級商務主管部鬥は、10業務日以内(在外大使(領事)館(経济商務処・室)に意見徴求時間は含まない)に企業申告資料の真実性および本規則第9条に掲げる状況に係るか否かについてー次審査を行わなければならず、同意後、一次審査意見および全ての申請資料を商務部に送付します。商務部は、省級商務主管部門または中央企業の申請を受領した後、5業務日以内に受理するか否かを決定します。申請資料が不備または法定の形式に合致しない場合には、5業務日以内に、申請者に一度に知らせなければなりません。受理後、15業務日以内(在外大使(領事)館(経済商務処・室)に意見徴求する時間を含まない)に審査確認を与えるか否かを決定しなければなりません。(本弁法13条)

② 省級商務主管部門の審査・認可
企業が第7条に定める国外投資を行うときは、省級商務主管部門に申請を提出します。 申請を受領した後、省級商務主管部門は、5業務日以内に受理するか否かを決定しなければなりません。申請資料が不備または法定の形式に合致しない場合には、5業務日以内に、申請者に一度に知らせなければなりません。受理後、15業務日以内(在外大使(領事)館(経済商務処・室〉に意見徴求する時間を含まない)に審査確認を与えるか否かを決定しなければなりません。(本弁法14条)

③ その他の国外投資の審査・認可
6条、7条に定める場合以外の対外投資、商務主管部門は、3営業日以内に審査を行うとしました(本弁法16条)。
証書の発行および理由説明などについてですが、6条、7条に定める対外投資を審査・認可するには、商務部および省級商務主管部門は、審査・認可決定を書面で発行し、かつ、「証書」を発行しなければなりません。審査確認を与えないものについては、書面により申請企業に通知して理由を説明し、これに法により行政不服審査を申し立て、または行政訴訟を提起する権利があることを告知しなければなりません。(本弁法15条)
申請事項の変更についてですが、審査確認後、もとの国外投資申諸事項に変更が生じた場合には、企業は、第2章の規定を参照してもとの審査確認機関に変更の審査確認手続を申請しなければなりません。企業間で国外企業の株式を譲渡する場合には、讓受人が変更予続の申請を担当し、商務部または譲受人の所在地の省級商務主管部門は、関連審査確認文書の写しを他の株主の所在地の省級商務主管部門に送付しなければなりません。(本弁法19条)
最後に対外投資の終了段階ですが、企業は、審査確認を受けた国外投資を終でする場合には、もとの審査確認機関に届け出て、「証書」を返納しなければなりません。もとの審査確認機関は、届出書(原文は「備案画」)を発行し、企業はこれにより外貨管理等の部門で関連手続をとります。企業およびこれに属する国外企業は、当地の法律にしたがい抹消手続をとらなければなりません。終了とは、もとの審査確認を受けた国外企業がそれ以後存続せず、または我が国の企業がもとの審査確認を受けた国外企業の持分等いかなる権益もそれ以後保有しないことを指します。(本弁法20条)



Q15 商務部などが審査・認可しない場合はどういう場合なのでしょうか?

A15 企業の対外投資が以下に挙げる事由の一つに該当する場合、商務部および省級商務主管部門が審査・認可しません。①中国の国家主権、安全および社会公共利益を害し、または中国の法律法規に違反する場合、②中国と関係国家や地区との関係を損なう場合、③中国が対外的に締結した国際条約に違反することになる可能性がある場合、④中国の輸出禁止技術および貨物に関わる場合。対外投資の経済・技術の実行可能性については、企業が自ら責任を負います。(本弁法9条)商務部などが審査・認可しない場合はどういう場合なのでしょうか?



Q16 国家外貨管理局という部局による外貨管理についても緩和されていると聞きましたが。

A16 外貨管理制度は、外貨資金の源泉審査、対外投資のための外貨購入総額、買収のための投資と対外投資増資などの外貨管理を含みます。中国では、国家外貨管理局およびその分枝機構は国内企業の対外投資について、外貨収支、外貨登録などの外貨管理や監督を実施しています。中国国家外貨管理局は、2009年7月13日、「国内企業による対外直接投資に関する外貨管理規定」(以下、「本規定」という)を公布し、対外直接投資に使用可能な資金の範囲を自己資金のみならず、借入外貨、人民元からの交換外貨、対外直接投資から得た利益などに拡大し、対外直接投資に使用する外貨の管理方式を「事前審査」の方式から「事後登録」という方式に変更することによって、対外直接投資の外貨規制が緩和されています。国家外貨管理局という部局による外貨管理についても緩和されていると聞きましたが。
また、2009年6月に「国内企業による国外貸付に関する外貨管理に関連する問題の通知」(以下、「本通知」という)が公布され、多国籍企業に限定されていた海外子会社への貸出に対する規制が緩和しされています。



Q17 具体的に教えてください。

A17 まず、外貨管理の権限と企業の権利についてご説明いたしましょう。 国家外貨管理局は、国の国際収支情勢と対外直接投資状況に基づき、国内企業の対外直接投資に係る外貨資金源の範囲、管理方式およびその対外直接投資による所得・利益の国外留保の関連政策に対し調整することができます(本規定5条)。国内企業は自ら所有する外貨資金、規定に適合する国内の外貨貸付金、人民元で購入した外貨または有形、無形資産および国家外貨管理局およびその分枝機構の批准を得たその他外貨資産をもって対外直接投資を行うことができます。国内企業の対外直接投資による利益は、国外に留保し対外直接投資に使用することができます。(本規定4条)
具体的に教えてください。
外貨登録制の導入についてご説明します。
国家外貨管理局およびその分枝機構は国内企業の対外直接投資およびそれによる資産、関連権益に対し、外貨登録および届出制度を実施します。(本規定6条)この外貨登録の手続は対外直接投資資金の対外送金手続の前提です。国内企業は、対外直接投資の主管部門による批准文書と対外直接投資外貨登録証をもって、外貨指定銀行で対外直接投資資金の対外送金手続を行います。外貨指定銀行はその信憑性を審査してから対外送金を行います。(本規定8条)



Q18 外貨登録の手続について教えてください。

A18 わかりました。

① 国内企業の資料の提出
まず、国内企業は所在地の国家外貨管理局およびその分枝機構で対外直接投資の外貨登録手続を行う時、その国外投資の外貨資金源について説明しなければなりません。(本規定6条)国内企業は、対外直接投資が対外直接投資の主管部門の批准を得た後、次の資料を持参して所在地の国家外貨管理局およびその分枝機構へ対外直接投資の外貨登録手続を行います。①申請書と「対外直接投資外貨登録申請書」、②外貨資金源の状況に関する説明資料、③国内企業の有効な営業許可書または登録証明および組織機構コード証、④対外直接投資の主管部門による当該投資項目に関する批准文書または証明文書、⑤前期費用の送金があった場合、関連説明文書および送金証書を提供する、⑥国家外貨管理局およびその分枝機構が要求するその他資料。外貨登録の手続について教えてください。
② 国家外貨管理局およびその分枝機構の審査・確認
国家外貨管理局およびその分枝機構は上述の資料を審査し間違いがないと確認した後、関連の業務システムにて関連状況を記録し、国内企業に対外直接投資外貨登録証を発行します。国内企業はそれをもって対外直接投資項目下の外貨収支業務を行います。複数の国内企業が共同で一つの対外直接投資を実施する場合、国内企業の所在地の国家外貨管理局およびその分枝機構から関連の国内企業へ対外直接投資外貨登録証がそれぞれ発行され、関連の業務システムに関連状況を記録します。(本規定7条)

③ 登録の変更
国内企業は下記の状況が発生して60日以内に、対外直接投資外貨登録証、対外直接投資主管部門による批准または届出書類および信憑性に関する関連証明資料をもって所在地の国家外貨管理局およびその分枝機構で対外直接投資外貨登録、変更または届出を行います。①国内企業が対外直接投資で得た利益および自ら投資した国外企業の減資、株式譲渡、清算等によって得た資本項目の外貨収入を国外に留保し、未登録の国外企業を設立、合併または資本参入に使用する場合は、前述の直接投資活動について対外直接投資外貨登録手続を行うこと。②登録している国外企業の名称、経営期限、合資・合作パートナーおよび合資・合作方式等の基本情報が変更し、増資、減資、株式譲渡または置き換え、合併または分割等の状況が発生する場合は、国内企業は前述の変更状況について直接投資外貨登録変更手続を行うこと。③登録している国外企業に長期株券、債権投資、対外保証等の資本変動に係らない重大事項が発生する場合、国内企業は前述の重大事項について対外直接投資外貨届出手続を行うこと。(本規定9条)

④ 登録の抹消
国内企業が保有する国外企業の株権が、株式譲渡、破産、解散、清算、経営期間満了等の原因によって抹消される場合は、国内企業は、対外直接投資主管部門の関連証明資料を取得して60日以内に、関連資料をもって所在地の国家外貨管理局およびその分枝機構で対外直接投資外貨登録の抹消手続を行わなければなりません。(本規定10条)



Q19 国外貸付制度というものがあると聞きました。教えてください。

A19 国外貸付とは、国内企業(金融機構を除く)が承認された限度額内で、契約で締結した金額と利率、および期限を以て、国外で合法的に設立した全額出資子会社か資本参画企業に直接貸し付けを行う資金融通方法をいいます。国外貸付は外貨指定銀行、或いは批准を経て設立された外貨業務資格を有する企業グループ財務会社を通じた委託貸付方式を以て実行します。(本通知1条)
国内企業の所在地外貨管理局(外貨管理部)は、国外貸付に関する限度額審査、登録、専用口座および資金の送金や振替等事項の監督管理実施に責任を負います(本通知2条)。 国外貸付制度というものがあると聞きました。教えてください。



Q20 最後に本講のまとめとして一言頂けませんでしょうか?

A20 わかりました。これまでご説明してきたように、中国では、「海外投資管理弁法」などの法令の施行により、対外投資の審査認可などの規制が緩和されています。しかし、中国企業の対外投資を促進するために、中国企業の海外進出の条件、審査認可の権限・手続・基準および外貨の使用などを一層緩和することが求められています。2013年12月3日、第五回中国対外投資協力フォーラムの開幕式で、中国国務院副総理汪洋は、「今後、中国政府は対外投資管理体制を改革し、企業と個人の対外投資の主体的地位を確立し、現段階の審査認可制度から登録制を中心とする管理方式へ転換し、審査認可の方式を規範し、審査認可の環節を減少し、その期間を短くする」と発言しました。(※4)
中国政府の管理には、「重審批、軽監管」(事前的な許可を重視し、事後的な監督管理を略視する)という傾向があります。これに対し、中国政府は行政審査許可制度の改革を推し進め、事前審査許可重視から中間過程、事後の監督管理を重視する政府管理に変更しています。今後、対外投資に対する管理も、その重心を事前的な審査許可制度から事後的監督管理へ転換すべきです。(※5)


さらに、これまで述べてきたように、中国の国家発展改革委員会、商務部、外交部、財政部、税関総署、国家税務総局、国家外貨管理局は中国企業の対外投資について、それぞれの分野から法的規制を定めていますが、これらの法令により、統一的対外投資法システムが構築されたとはいえません。(※6)今後の対外投資を促進するために、それぞれの部門が立法プロセスを加速させる他、「対外投資事業調整委員会」(※7)または「海外投資管理委員会」(※8)のような統一的な管理機関を設立し、統一的な「海外投資法」(※9) 、「対外投資促進法」(※10) または「対外投資協力法」(※11) を制定する必要もあります。この法律の制定により、中国企業の対外投資を法的に規範し、その規制を一層緩和することができると思いますよ。 最後に本講のまとめとして一言頂けませんでしょうか?



※4 蘇南:「対外投資:核准制改為備案制」、『中国能源報』2013年12月9日参照。
※5 姜曦:「論我国海外投資立法的完善」、『特区経済』2011年2号、246頁参照。
※6 林愛民:「論我国海外投資立法缺陥及完善」、『河北法学』2008年7号、216頁参照。
※7 呉松:「海外投資呼唤統一管理機構護航」、『中国経済導報』2013年4月2日参照。
※8 王宏纲:「中国海外投資監管刍議」、『改革与開放』2010年6号、65頁参照。
現在、中国の商務部と国家発展改革委員会により、「海外投資法」の草案を起草している。
※9 尹振茂:「両部委酝酿出台《海外投資法》」、『証券時報』2013年6月18日参照。
※10 琚逸雲:「国際投資与我国対外投資的法律思考」、『合肥学院学報』2005年11月、118頁参照。
※11 馬其家:「我国『対外投資合作法』的立法構建」、『寧夏社会科学』2011年1号、29頁参照。