【中国における海外投資促進に関する法体系の構築とその課題】


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Q1 21世紀に入り、中国は、「走出去」という国家戦略を打ち出しているようですね。
  これはどういう意味ですか。

A1 これは「海外進出」という意味です。中国は、今中国資本や技術の海外進出を積極的に推進しています。そのため、投資許可、外貨管理、税務優遇などの関連法令を制定し、海外投資促進に関する法体系の構築を始めています。 「走出去」とはどういう意味ですか?




Q2 具体的には、海外投資促進のために、どのような法律が定められていますか?

A2 2009年3月、中国商務部は「海外(境外)投資管理弁法」が制定されました。中国企業の海外投資の際の審査基準、審査手続、指導や情報提供などを明らかにしたものです。この「弁法」の実施に伴い、投資プロジェクトの審査・許可権限の移転、企業設立時の申請手続きの簡素化、審査期間の短縮化などの各種規制の緩和が図られることとなりました。海外投資促進のために、どのような法律が定められていますか?
しかし、融資困難や外貨管理の制約、許可手続の煩雑、政府の支援不足などの問題がまだ存在しています。これらの問題を解決するため、統一的な「海外投資促進法」を制定する必要があります。





Q3 「走出去」に至るこれまでの歴史的経緯について教えてください。

A3 1978年12月18日に開かれた中国共産党第11期中央委員会第3回全体会議(通常「11期3中全会」と呼ばれる)で、文化大革命時期の「階級闘争」に終止符が打たれました。経済建設を中心とする政治路線と「改革・開放」の基本方針が確立されたのです。この「改革・開放」政策の下で、中国は外国直接投資の誘致や対外貿易の拡大を推進し、海外の資金と技術を国内に取り込み成長を続けてきました。「走出去」に至るこれまでの歴史的経緯について教えてください。
一方、21世紀に入り、中国は、従来の「引進来」政策に加えて、経済の成長によって蓄えた資金力・技術力を利用し、中国資本や技術の海外進出を積極的に推進し、中国企業の外国投資や経営の国際化を奨励しました。この政策が「走出去(海外進出)」という国家戦略として打ち出されたのです。2001年3月15日、第9期全国人民代表大会第4回会議で批准された「国民経済・社会発展10 回五ヵ年規画綱要」の中で、「走出去」戦略が正式に盛り込まれました。



Q4 「走出去」の意味については、広義説と狭義説があるそうですね。

A4 はい。高橋五郎先生が編纂された『海外進出する中国経済』(日本評論社2008年)によると狭義の「走出去」は中国企業の対外直接投資を指し、広義の「走出去」は商品輸出、商品・社名ブランド確立、直接・間接の資本輸出、技術修得、資源開発、市場開拓、労務輸出、建設工事請負などを含んでいます。この「走出去」政策の下で、中国企業は海外進出を始めたわけです。近年、中国の対外直接投資額は急速に増加しています。 「走出去」の意味については、広義説と狭義説があるそうですね。



Q5 本講のメインテーマは何になりますでしょうか。

A5  中国は、企業の海外投資を保障し、促進するために、関連法令を制定し、海外投資促進に関する法体系を構築する必要があります。例えば、多くの国が国内法(「海外投資法」など)や投資先国との投資保護協定によって海外投資企業を保護しています。本講のメインテーマは何ですか?
中国では、現在まで、海外投資に関する法令が多数制定されましたが、海外投資促進に関する法体系はまだ構築されていません。そのため、本講では、まず、中国における海外投資促進に関する法体系構築のプロセスを概観し(Ⅰ)、そしてその主な内容を取りまとめ(Ⅱ)、さらにその課題として「海外投資促進法」の制定について論じ(Ⅲ)、最後に、海外投資促進に関する法体系の構築に関する今後の展望を行うこととしたいと思います(「おわりに」)。



Q6 中国における海外投資促進に関する法体系の構築プロセスについて教えてください。

A6 中国における海外投資に関する法令の制定は、「走出去」戦略の提出や「海外(境外)投資管理弁法」の制定を基準として、三つの段階に分けられます。

第一段階は1978年の「改革・開放」政策の実施から2001年の「走出去」戦略の提出までです。第二段階は2001年の「走出去」戦略の提出から2009年の「海外投資管理弁法」の制定までです。第三段階は2009年の「海外投資管理弁法」の制定から現在までです。 中国における海外投資促進に関する法体系の構築プロセスについて教えてください。



Q7 では、まず、第一段階(1978~2000年)の海外投資法令の制定について教えて頂けますか?

第一段階(1978~2000年)の海外投資法令の制定について教えて頂けますか? A7 第一段階の時期には、まだ専ら外資導入(「引進来」)に関心の重点がありますが、海外投資に関する法令が制定されたこともあります。具体的には、表1のとおりです。

中国における海外投資関係法令年表



Q8 この表についてもう少し詳しく説明していただけますか?

A8 わかりました。まず、1979年8月、国務院は15項目の経済改革措置を打ち出し、外国で企業を設立することができると初めて明記しました(13項目)。しかし、1991年3月、国家計画委員会は「海外投資プロジェクトに関する管理強化の意見」を国務院に提出し、「現段階、中国は大規模で海外投資の条件がまだ整っていない」と指摘しています。この判断は1990年代の中国海外投資の基本的指針となりました。そのため、第一段階においては、上述のような海外投資に関する法令を制定していますが、海外投資を管理・監督・制限する規定が多かったのです。この表についてもう少し詳しく説明していただけますか?



Q9 第二段階(2001年~2009年)の海外投資促進に関する法令の制定について教えてください。

A9 「走出去(海外進出)」が国家戦略として確立された21世紀になると、海外投資を促進する法律体系の構築が要求されました。そして、2001年のWTO加盟に伴い、法制度の透明化や司法審査の公平化・合理化などが要請されたのです。そのため、中国は2001年から海外投資促進に関する法体系の構築を始めます。具体的には、表2のとおりです。第二段階(2001年~2009年)の海外投資促進に関する法令の制定について教えて下さい。

中国における海外投資促進関係法令年表



Q10 この表についても、もう少し詳しく説明していただけますか?

A10 はい。2001年3月15日、第9期全国人民代表大会第4回会議が開催され、「国民経済・社会発展10回五ヵ年規画綱要」が可決されます。「走出去」戦略を実施すると明記し、「中国が比較優位にある対外投資を実施し、国際的な経済技術協力の分野、ルート、方法を拡大する」と要求します。

そして、2003年10月、中国共産党第16期中央委員会第3回全体会議が開催され、中国共産党中央「社会主義市場経済体制整備の若干の問題に関する決定」が審議、可決されました。この決定の中で、引き続き「走出去(海外進出)戦略」の実行し、対外投資に関するサービス体制を整備し、海外経営に関する企業の経営管理自主権を拡大し、海外投資企業への管理・監督システムを整備し、中国の多国籍企業の発展を促進すると規定されています。この表についても、もう少し詳しく説明していただけますか?



Q11 2003年に初めて商務部が登場していますね。

A11 そうなんです。2003年3月、第10期全国人民代表大会第1回会議の決議により、国家経済貿易委員会の貿易部門と対外経済貿易合作部とが合併して、商務部が成立しました。商務部は中国の経済と貿易を主管する行政部門です。2003年に初めて商務部が登場していますね。
さらに、見ていきますね。2006年3月16日、第10期全国人民代表大会第4回会議が開催され、「国民経済・社会発展11回五ヵ年規画綱要」が可決され、「条件のある企業が対外直接投資を行い、国境を越えた経営を行うことを支持する」と示されました。「海外投資の促進と保障のシステムを改善し、海外投資に対する総合調整、リスク管理、海外国有資産への監督を強化する」との要求が出されたのです。このような背景のもとで、第二段階では、これまで述べた海外投資を促進するために、投資許可、外貨管理、税務優遇などの関連法令を制定し、海外投資促進に関する法体系の構築を始めてきました。



Q12 第三段階(2009年~)の「海外(境外)投資管理弁法」の制定について教えてください。

A12 はい。では現在に至るサードステージについてお話ししましょう。
海外投資の促進と規範化を図るために、「確たる留保の必要な行政審査・許可項目に対し行政許可を設定する国務院決定」(国務院令(第142号)、2004年6月29日)に基づき、中国商務部は2009年3月に「海外(境外)投資管理弁法」を制定しました。この「弁法」は中国の海外投資促進に関する法体系構築の段階的成果として、中国の国内企業による海外投資の際の必要な審査・許可手続などを明らかにしたものです。 第三段階(2009年~)の「海外(境外)投資管理弁法」の制定について教えて下さい。



Q13 その主な内容はどういったものでしょうか?

A13 (1)審査・許可権の移管その主な内容はどういったものでしょうか?
   (2)審査プロセスの簡易化
   (3)審査基準の明文化
   (4)指導やサービスの強化、になります。







Q14 では、まず(1)審査・許可権の移管について教えてください。

A14 企業が以下の事由に該当する海外投資を行うには、商務部に申請資料を提出し、(1)審査・許可権の移管について教えて下さい。その審査・許可を受ける必要があります。
  ①中国と外交関係を確立していない国における海外投資
  ②特定の国または地区における海外投資
  ③中国側の投資額が1億米ドルおよびこれ以上の海外投資
  ④複数の国家(地区)の利益に関わる海外投資
  ⑤国外特殊目的会社の設立(本弁法第6条)。


一方、 地方の企業が以下の事由に該当する海外投資を行うには、省級商務主管部門に申請資料を提出し、その審査・許可を受ける必要があります。
  ①中国側の投資額が1000万米ドルおよびこれ以上、1億米ドル以下の海外投資
  ②エネルギー、鉱物類の海外投資
  ③国内における投資勧誘の必要のある海外投資(本弁法第7条)。

本弁法6条、7条の規定からみれば、商務部は、今後投資額が1億米ドルを上回る海外投資、特定国家に対する海外投資等を含む少数の重大、敏感な海外投資については審査・許可権を維持するものの、他の海外投資に関しては、審査・許可権を省レベルの商務主管部門に移譲するということになります。これにより、一部審査・許可権の移譲もなされています。



Q15 (2)審査プロセスの簡易化について教えてください。

A15 企業が本弁法第6条、第7条に規定する事由に該当する海外投資を行うには、次の資料を提出しなければいけません。
  ①申請書
  ②企業の営業許可書の写し
  ③国外企業の定款および関連合意または契約
  ④国家関連部門の審査・許可または届出文書
  ⑤国外買収事項前期報告表(買収類の海外投資の場合)
  ⑥主管部門が要求するその他の文書(本弁法第12条)

第6条、第7条に定める海外投資を審査・許可するには、商務部および省級商務主管部門は、審査・許可決定を書面で発行し、かつ、「証書」を発行しなければなりません。(本弁法第15条)。6条、7条に定める場合以外の海外投資について、企業は、「海外投資申請表」の提出のみで申請できるようになりました(本弁法第8条)。しかも、商務主管部門は、3営業日以内に審査を行うとしました(本弁法第16条)。すなわち、企業は、3営業日以内に「企業海外投資証書」を受けることができるようになったということになります。



Q16 (3)審査基準の明文化について教えてください。

A16 企業の海外投資が次に挙げる事由の一つに該当する場合、商務部および省級商務主管部門は審査・許可しません。
  ①中国の国家主権、安全および社会公共利益を害し、または中国の法律法規に違反する場合
  ②中国と関係国家や地区との関係を損なう場合
  ③中国が対外的に締結した国際条約に違反することになる可能性がある場合
  ④中国の輸出禁止技術および貨物に関わる場合。
 海外投資の経済・技術の実行可能性については、企業が自ら責任を負う。(本弁法第9条) (3)審査基準の明文化について教えて下さい。



Q17 (4)指導やサービスの強化について教えてください。

A17  商務部および地方商務主管部門は今後、海外投資に対する指導・促進・サービスの業務を強化し、「対外投資協力国(地区)別指南」を公布します。また「対外投資協力情報サービスシステム」を構築し、海外投資を行う企業に向けて問い合わせや情報のサービスを提供します。さらに二国間・多国間の経済協力メカニズムの構築や整備も進められます。二国間・多国間の経済協議メカニズムや投資促進メカニズムを利用して、対外投資を促進し、二国間投資促進保護協定や二重課税回避協定を関連国と結び、政府間の疎通と交流を強化し、良好な国際関係を作り出すことができます。 (4)指導やサービスの強化について教えて下さい。



Q18 では、次に、中国における海外投資促進に関する法体系の主な内容について教えてください。

A18 現段階の中国の海外投資促進に関する法体系についてはすでに述べました。これらの法令は、海外投資に関する審査・許可、外貨使用、税制や融資の優遇措置などを定めています。その主な内容は以下の通りです。



  1.海外投資プロジェクトの管理制度
  2.外貨管理制度
  3.金融支援制度
  4.税制優遇制度
  5.投資の指導や情報の提供



Q19 1.海外投資プロジェクトの管理制度について教えてください。

A19 海外投資プロジェクトの管理制度は、投資プロジェクトの事前的な審査・許可、プロジェクト評価と執行状況審査などを含みます。
まず、商務部および省級商務主管部門が、企業の海外投資について審査・許可を実施します。 商務部が、「海外投資管理システム」を確立します。審査・許可された企業に対して、「企業海外投資証書」を発行します。(海外投資管理弁法第5条)そして、海外投資の評価や執行状況の審査は対外貿易経済合作部と外貨管理局により共同で年度検査を行います。



Q20 2.外貨管理制度について教えてください。

A20 外貨管理制度は、外貨資金の源泉審査、対外投資のための外貨購入総額、買収のための投資と対外投資増資等の外貨管理を含みます。中国国家外貨管理局は、2009 年6 月に国内企業の国外貸付に関する外貨管理についての通知を公布し、多国籍企業に限定されていた海外子会社への貸出に対する規制を緩和しました。また、2009 年7 月に対外直接投資における外貨管理規定を公布し、対外直接投資に使用可能な資金の範囲を自己資金のみならず、外貨借入、人民元からの交換外貨、対外直接投資から得た利益などに拡大、対外直接投資に使用する外貨の管理方式を事前審査から事後登録に変更するなどの規制緩和が盛り込まれています。 2.外貨管理制度について教えて下さい。



Q21 3.金融支援制度について教えてください。

A21 中国輸出入銀行、国家開発銀行、中国輸出保険信用公司等の政府系金融機関が、優遇ローンや投資保険を提供しています。3.金融支援制度について教えて下さい。
例えば、海外での加工・組立業務に対する優遇金利の融資、資源開発プロジェクトに対する金利の全額補助、重点融資プロジェクトの専用の資金枠と優遇金利、企業の融資信用保証の提供などが実施されています。企業の対外直接投資を支援するための特別基金を設けている地方政府もあります。



Q22 4.税制優遇制度について教えてください。

A22 対外投資企業が正式に開業あるいは操業した日から5年間は、中国側が配分を受けた税引き後利潤(進出先国が中国と「所得に対する二重課税の回避協定」を締結しているか否かに拘わらず)につき、所得税を免税とします。また、国外での原料、部品輸出加工・組立(中国の企業が現有技術、設備投資を主として、国内設備、技術、部品、原材料の輸出拡大をはかる国際的経済貿易合作方式)については、輸出戻し税の奨励策を適用します。さらに、中国側が投資としてもっていった設備、機材、原材料については、輸出関税が免除されます。 4.税制優遇制度について教えて下さい。



Q23 5.投資の指導や情報の提供について教えてください。

A23 中国政府は、2004年7月、「対外投資国別産業指導目録」を発表し、67ヵ国について、投資の可能性のある分野を具体的に紹介しました。その後も、国別・産業別のきめ細かな産業指導を行っています。また、商務部は海外投資に携わる人材養成コースなども開設して支援しています。

そして、「走出去」政策を推進する一環として、中国政府は企業に対して対外投資に関する情報の提供を積極的に行っています。例えば、2004年8月から、商務部と外交部は『対外投資国別産業指導目録』を出し、対外直接投資に関する国別の総合的な情報を提供しており、現在、この『目録』は制度化されています。5.投資の指導や情報の提供について教えて下さい。
さらに、商務部は2006 年から『国別貿易投資環境報告』を毎年に出版し、主な貿易相手国や主要な投資先国に対する経済や貿易の発展状況、貿易や投資に関する管理制度、貿易や投資障壁などの情報を提供しています。ほかに、商務部は公式サイトや海外公館の商務サイトに国別対外投資に関する最新の動向やビジネス情報を提供し始めています。



Q24 中国における海外投資促進に関する法体系の課題を教えてください。
  「海外投資促進法」の制定を求める声が高まっていると聞きます。

A24 これまで述べてきたように、「海外投資管理弁法」などの海外投資に関する法令は、投資プロジェクトの審査・許可、外貨管理、金融支援、税制優遇、投資の指導や情報の提供などの面で企業の海外投資を促進しています。特に、2009年の「海外投資管理弁法」の実施に伴い、投資プロジェクトの審査・許可権限の移転、企業設立時の申請手続きの簡素化、審査期間の短縮化などの各種規制の緩和が図られることとなりました。一方、中国企業の海外進出にはまだ多くの障害があるとされます。例えば、融資困難や外貨管理の制約、許可手続の煩雑、政府の支援不足などの問題がまだ存在しています。この意味で、現段階の海外投資促進の政策や法令はまだ不十分なものです。

2006年7月5日国家発展・改革委員会、商務部、外交部、財政部、税関総署、国家税務総局、国家外貨管理局は、「走出去」戦略の実現を図り、対外投資の効果的で秩序があり、全体的に調和ある健全な発展を推進するために、「海外投資産業指導政策」と「海外投資産業指導目録」を制定し、制度的枠組を整えたものを発表しました。この政策は、中国の投資者が現金、実物、有価証券、無形資産等を用いて、国外で新設、M&A、資本参加、再投資等の方式によって、直接または国外のホールディングカンパニーを通じて国外および香港・マカオ・台湾地区で国外企業を設立、買収、あるいは資産を手に入れるなど、所有権、収益権、管理権等の獲得を中心とする経済活動に適用されるものです中国における海外投資促進に関する法体系の課題を教えてください。。これにより、統一的対外投資産業政策の枠組が構築されたといえます。

しかし、中国企業の海外投資については、統一的な「海外投資法」や「海外投資促進法」、「海外工事請負管理条例」、「海外労務合作管理条例」などは制定されるにいたっていません。この問題に対して、2011年3月17日、第11期全国人民代表大会第4回会議が開催され、「国民経済・社会発展12回五ヵ年規画綱要」を可決し、「対外投資の法規体系を速やかに改善し、投資保護、二重課税防止等に関する多国間・二国間の協定を積極的に締結する」、「対外投資の促進体系を健全化し、企業の対外投資の利便性の程度を向上させ、中国の海外での権利と利益を擁護し、各種のリスクを防止する」と要求しました。



Q25 この要求に応じて、「海外投資促進法」の整備を求める声も高まっているのですね。

A25 そうです。例えば、国家発展・改革委員会の外資利用・海外投資司の孔令竜司長は、中国に、外資導入について定めた「外商投資企業法」があるかたわら、中国企業の海外投資について、法整備が立ち遅れていたと指摘し、現在は国家発展・改革委員会と商務部と「中国企業海外投資促進法」の制定に向けた準備を進めており、既に起草段階に入っているとしました。

また、中国の商業・工業団体や企業でつくる中華全国工商聯合会は既に、今年の両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)で、国務院(中央政府)に「走出去」の追い風となる条例「海外投資促進条例」の制定を急ぐよう求める意見を提出することを決めています。手続きの簡素化や審査の手順、人員の出入境、資金の流動、労働力の確保、利潤の分配や再投資、税制などについても、明確に規定するよう求めています。商務部の対外投資・経済合作司の李明光処長は、同条例がすでに検討段階に入りつつあることも明らかにしています。同条例では海外投資の許認可権限について、さらに下部の機関に移譲することなども盛り込まれる見通し。関係者は「同条例を先行して制定、一定期間の実践を経てから新法を打ち出す形になるだろう」と分析しています。 この要求に応じて、「海外投資促進法」の整備を求める声も高まっているのですね。



Q26 本日の講義のまとめをして頂けますか。

A26 はい。中国は、高度経済成長の維持を目指して、一層の市場経済化や国際的相互依存関係を高めるようになり、グローバリゼーションの流れの中で、2001年12月11日に世界貿易機関(「WTO」)に加盟しました。これにより、中国は、世界貿易の枠組みに組み込まれ、世界貿易のルールにしたがい、法制度の透明化や司法審査の公平化・合理化などが要請されることになり、法治国家の建設とそれに向けた司法改革が緊要な課題となっています。本日の講義のまとめをして頂けますか。
それと同時に、「走出去(海外進出)」政策が国家戦略として打ち出されました。そのため、今後中国における海外投資促進に関する法体系の構築については、中国の特色ある「海外投資促進法」を制定することのみならず、WTO加盟議定書の要求に基づき、国際ルールに整合させるために海外投資促進に関する法体系の整備が求められています。